「宇宙人のホームステイ」(2)



少しすると、頭の中で声がした。誰かが話しかけてきた。

「こんばんは。私はエアという星の学校の先生です。はじめまして。」

へえ、日本語だ。よかった。

ボクも返事をした。

「ぼくは、あきらという名前です。はじめまして。」

すると、また声がした。

「あきらくんにお願いがあります。私の学校の生徒を、夏休みの間、

あなたの家に泊めてもらえませんか?

ホームステイさせてもらいたいのです。

夏休みの宿題のレポートを書くためです。

私の生徒の一人が、訪問先に地球を選びました。

いつも宇宙を眺めているあきらくんに、ぜひお願いしたいのです。」

えー?宇宙人の子供が、ボクの家で過ごすの?わー、すごい!

すごいことになった!

さて、どうしよう。

ボクはいいけれど、お父さんとお母さんはびっくりして気絶しちゃうかもしれない。

心臓がおかしくなっちゃうかもしれない。

ボクは、もう一度、返事をした。

「もちろん、ボクは嬉しいけれど、ボクの両親に聞いてみないと

いけないので、少し待っていてもらえますか?」

すると、また声がした。

「いいですよ。私たちはここで待ちます。」

さあ、さあ、さあ、どうしよう。




ボクの部屋は2階にあるから、とりあえず、下のリビングルームに行ってみた。

お父さんは新聞を読んで、お母さんはテレビを見ていた。

ボクは、深呼吸をした。

「お父さん、お母さん、ちょっと話があるんだけれど。」

「あら、あきらくん、どうしたの?」

お母さんは、不思議そうな顔をした。

「じつは、うちにお客さんを泊めてもいいかな?」

「お客さんだと?」

今度はお父さんが持っていた新聞から顔をあげた。

「うん、ちょっと遠いところから来た子供がいるんだ。」

あきらかにお父さんは、不機嫌な顔になった。

「なんで子供が遠いところから来るんだ?それに、なんでお前の

 知り合いなんだ?どこの子だ?夏休みだから、家出でもしてきたのか?」

「いや、ちがうよ。もっと遠いところ、あの、宇宙から。」

「いいかげんにしなさい。」

お父さんは怒り始めた。

「いったいどこの誰だ?」

あー、困った。

「では、ちょっとここに連れてくるよ。待ってて。」

ボクは、お父さんとお母さんの顔を見ないで、2階に駆け上がった。




外の円盤は、まだいた。

よかった。

頭の中で話しかけてみた。

「ボクのお父さんに会ってもらわないと、話が進みません。

今からここに来てもらえますか?」

「いいですよ。私の生徒は、アキトという名前です。

これからアキトがそこに行きます。」

「えーと。彼は人間ですか?」

とたんに笑い声がした。

「ボクは君と同じ体だよ。」

男の子の声だった。

ふう。タコのような火星人でなくてよかった。

ボクは、ドキドキしながら待った。

ふわっと部屋の中に光が入ってきた。

と思ったら、もう目の前に男の子がいた。

へえ、これがアキト?

ボクと同じくらいの背だ。

まったく人間と同じだ。

よく見ると、耳が少しとがっている。

あと、親指が長い。

でも、あとはボクと同じ。

洋服も、Tシャツとズボンで、宇宙服でなかったのが少し残念だ。

ボクは、失礼だと思いながらも、初めて見る宇宙人に、すっかり興奮して、

じろじろと見てしまった。

アキトくんは、にこにこと笑っている。

そうか、笑えばいいんだ。

「あははははは。」「あははははは。」

ボクはアキトくんと一緒に笑った。

「じゃあ、下に行こうよ。お父さんが、ちょっと怒っているんだ。

遠くから来た子供は、家出してきたとか、何か問題があると思っているんだ。」

ボクは、この宇宙人の男の子がすっかり好きになった。

見た瞬間に、気が合う、って思ったんだ。

これは、楽しい夏休みになりそうだぞ。